故郷の雨 ――淡路市長―― 門 康彦
愛と正義の政治家、『砂楼の伝説』の著者でもある詩人 門康彦淡路市長の『故郷の雨』ネット版を、順次紹介してゆきます。
「心は少年」 淡路市長(兵庫県) 門 康彦 <市政・マイプライベートタイム 平成26年1月号>

「帰郷」
平成11年3月31日市町村総数3,232。平成22年1,727。言われるところの平成の大合併。平成25年には1,719。差引1,513の市町村が消えた事になります。
行財政基盤の強化と地方分権推進などの目的ですが、現場の市町村から分かり易く見ると、効率化に全て集約されます。
新しく出来た市町の内、5市町村以上が合併したのが119。兵庫県では4。その内、市と合併したものを除けば2。淡路市5町と丹波市6町。数だけではそう特別で無いように思われますが、決定的な違いは地形。淡路市は、播磨灘と大坂湾に面し漁業農業が隣接し、中央は丘陵で分断されて5万人足らずの人口は5か所に散在し、市街地を形成していません。
その上、マイナス要因として、19年前の阪神淡路大震災のダメージが、県内一厳しい財政状況でした。
私に、合併5町の初代市長として地元の要請が有ったのは、淡路県民局長から転勤し、県の代表監査委員として勤めていた時でした。
「どの地域から出ても上手くいかない。行政を知り尽くした、半分余所者のお前が、今は適任。お前しかいない。頼む。」友人達の言葉を背に、お世話になった前兵庫県知事貝原俊民氏を訪ねました。
「君は財政課出身、何故、敢えて火中の栗を拾うんだ?」優しい言葉をかけていただきました。
「故郷に恩返しをします。」珍しく殊勝に言った言葉に、「そうか、苦労するよ。」と微笑んでいただきました。その微笑の意味が分かったのは、県を早期退職し、故郷で講演会を開催し講師として来島していただいた時、素人集団が交通費等の謝礼として渡した寸志の倍の祝金をいただいた時でした。持ってきていただいた秘書の方が、「君ならやれると伝えておいてくれ」と伝言をいただいた時でした。本当の、「倍返し」でした。
「生家」
70年以上も前に父が建てた家は、今風の家だったのでリフォームは無理と言われ、母と姉、三人で過ごした思い出の詰まった家を解体しました。残したものは、庭の隅に有った楠木を切断したものと、井戸の復活のみ。家の中に有ったものは断捨離の優しさを通り越して破壊。どうやら、茶器や掛け軸など高価なものも有ったらしく、非難の視線は今も続いています。
一番きつい視線は、帰郷後、母の死後誰も住んで居なかった家を、兎に角、生活出来るようにしようと、一緒に掃除をしてくれた方でした。「この家は良い。まさに日本の家屋の文化の香りがする」と言っておられました。
解体後、何にも無くなった家屋跡の現場に、言葉無く佇んでおられた後姿が印象的でした。が、それ以来、私が、「文化」の「ぶ」の字でも言おうものなら、呆れたような表情をされます。
いずれにせよ、父と母が息を引き取った家は、一階は誰もが使えるように、二階は私の居宅に生まれ変わりました。
イメージは、松下村塾。無頼派の友人が贈ってくれた屋久杉の看板、「門下市塾」を掲げ、門ミユキの表札の裏に、門康彦と書いて玄関を整えました。
私の趣味の一つに、掃除が有りますが、父も母も逝った生家で私も逝く確率は高く、何時もピカピカに努めています。台風の時でも喫煙は外でするは勿論、トイレは小便も全員座ってすることがルールです。それでも広間の一か所に煙草の焦げ跡が有ります。
その拘りは何ですか?と問われ、「凛として逝きたい」と答えたら、その人は何を勘違いしたのか、広間に、AEDを置いてくれました。
「淡路島三市時代の混乱の時、友人たちと敢えて火中の栗を拾う。他市とせめて肩を並べるために、不利な戦いを選択せざるを得ない。10年20年の時間を経ての評価となるだろう。我々の世代では時間が足りない。淡路市後継者育成塾として、生家に塾の拠点を建設する。」(旅立ちの唄・門康彦web Site)
「少年」
志筑小学校1年生の通知簿の所見欄に、恩師から「潔癖すぎる」と論評されています。良くも悪くもそのまんまです。
悪さをしてその事を認めなかった子供の私を、母から脇差で、一緒に死のうと責められた事が有ります。本気で逃げました。短距離は今でも早いです。
雨の日、大学進学のため離島する私をバス停に送ってくれ、傘をさすのも忘れて、「何になってもいいが、ヤクザだけにはなるな!」と涙声で言っていた母の姿が、私の原点に有ります。
義理、人情、そして愛。忘れてはならない覚悟を、「心は少年」という言葉に託して早、9年目、空手4段の武闘派の看板はストレス性腰痛に粉砕され、賭けたらプロよりも強いと言われたゴルフは、百ヤードを5番アイアンで打つようになり、クラブや老人会で涙を誘った歌声は嗄れてしまいました。
少し弱気になりかけた最近、外人部隊に消えたはずの後輩から便りが有りました。「先輩何をやってるんですか!」
「見ろ/あの暗闇に燃える火を/俺達の時代は終わっても/生きてある限り/あの火は消えない/俺達の火/決して汚れない/戦士の/雨に逆らう/高貴の/あれは俺達の火/消えることなき/自恃の火」(詩集・砂楼の伝説)
初心忘れることなく、「いつかきっと帰りたくなる街づくり」に市民と共に取り組んでみたいと覚悟を新たにしている天狼(アソンブレ歌謡祭)です。
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