故郷の雨 ――淡路市長―― 門 康彦
愛と正義の政治家、『砂楼の伝説』の著者でもある詩人 門康彦淡路市長の『故郷の雨』ネット版を、順次紹介してゆきます。
平成18年 年度当初挨拶
いよいよ淡路市も2年目に入りました。継続と融和の準備段階から、資産の見直しと再整備の実務の段階に入ります。これからの淡路市を占う意味でも最重要の年度になります。
そのために、組織整備と、市行政としての一体感を図るための人事をしました。いずれも、過渡期を意識しての短期、緊急対応です。
次年度、3年目にはそれまでの検証と実行という事になります。
私達には、時間が有るようで有りません。財政的視点からだけで言いますと、本市の歳入の根幹をなすのは交付税であり、合併算定替えにより全額保証されるのが10年間であります。
10年という期間は既に1年を経過したわけです。9年有るというより9年しかないと思う方が賢明です。
ともか10年後、どういった形でこの淡路市を次世代に託す事が出来るか、その一点が最重要課題なのです。
事の是非は別にして、淡路島3市時代の過渡期にあって、せめて他の2市の足を引っ張るような事がないような行政としての形をつくらなければなりません。
地形のハンディーキャップは、決定的な障害になる恐れが有ります。それらを乗り越えるためには、この合併しか市が目的であってはならず、手段として将来のために効率よく稼働させなければならないのです。
日本全体が二極化を加速化させる現代において、淡路市がどう有らなければならないかを、私達は行政の立場から考えなければなりません。
例えば、公共投資に批判的な人がいますが、将来を見据えたそれら投資は、短期的な視点で評価してはならないのです。それと同じ事で、経常経費の削減も中長期的な見通しの中でしていかなければなりません。
地域限定のしがらみ、自分の利益のための行為、それらを今は乗り越えなければならないのです。
年度当初に当り、心構えとして3点、提案します。

一つは、住民の目線に立ち、官僚主義を打破する事です。
官僚主義が全て悪いとは思いません。しかし、「訓練された無能力」と言われる、官僚制組織に見られる硬直化した行動様式や意識、尊大かつ横柄な態度、専横(我が侭、横暴)法規万能主義の形式主義、秘密主義、事なかれ主義、そして非能率といったイメージは、払拭しなければなりません。
また、集団内部で自分の属する部門に立て龍って排他的になるセクショナリズムの傾向、権威主義、特権意識、縄張り根性、派閥主義、セクト主義、これら要らぬしがらみも断ち切る必要があります。
そして、仕事をするに当たって、厳しい局面で庇いあう、下からの改革案が少ない、何でも文書で欲しがる、減点主義的な傾向が残っていると言った前例踏襲主義も見直さなければなりません。
現代は、日本の戦後の成長を支えてきた官僚のあり方が問われているのです。価値観は多様化し、前例だけでは参考にならなくなって来ています。これからは、個々人がそれぞれの考え方を確立し、どのような事案にでも自然体で対応出来る組織を再編成しなければならないのです。
平気で嘘をつく、自分の利益を優先するといった傾向は、日本の文化でもあった恥の概念が喪失している事を意味し、新しい行動指針も必要としています。
私達、淡路市の行政の行動指針は、過渡期の動乱期を認識し、個々人の能力を最大限引き出し、責任に黄づいた日々の実行と、絶えず説明責任を意識し、毎日変化を覚悟する姿勢が求められています。

二つは、過渡期を意識した意識改革です。
あってはならない、職員の事件なども起きていますが、今は、間違ったしがらみを断ち切って、新たな領域に踏み出さなければなりません。
刑事訴訟法第239条に公務員の告発の義務がうたわれています。
一般の民間人は、告発することができます。しかし、公務員は告発しなければならない義務があります。
アメリカ合衆国のケーシー・ルードは、誇り高き内部告発者として裏切りは社会の支えという信念で、「内部告発は、強く健全な社会を作るのに欠かせない」と、同僚の離反、誹誇中傷、昇給停止、雇用契約打ち切り、そして、最後には脅迫、そんな事に嫌気がさして妻から離婚されながらも活動を続けたという人です。
アメリカは、主張する人々が作っていく国といわれているように支援する人も多いわけですが、仲間を売ることが恥としてきた価値観を持つ日本人には、理解のしにくい世界であったはずなのですが、最近はそれでは駄目なようです。
何よりも、公務員の責務は、住民サービスであり、その観点から、三つの責任
●適切な対応(リスポンスビリティー)とは、接遇に留意すること。
●情報開示(ディスクロージャー)とは、原則情報は公開であること。
●説明責任(アカウンタビリティー)とは、内部にだけ通用する理屈は不可であること。
これらを肝に銘じる、意識改革が必要です。決して傲ることなく、謙虚に、丁寧な行政執行に務める意識を持ちましょう。

三つ目は、淡路市の地域づくりについてです。
地形的な特徴から、淡路市はミニ淡路島、東北地方に類似していると言われています。
所謂、津名郡は一つと言うより、一つずつ、と言う表現が正鵠を得ている訳です。そういう状況の中で、融和という作業を効率的に行う為には、どういった手法が有効かと言うことを考えなければなりません。
まず創世期としては、行政主導という方法を取らざるを得ないと思います。勿論、民意を無視すると言う事ではありません。状況、情報を的確に把握し、冷静な判断を基に、一番優れたと思われるものを選択していく。断固たる決意と揺るぎない実行力で、痛みを自己責任として共有しながら、地域を纏める。合併後の最初の十年は、正直、時の市長は、ボランティアの精神に徹しなければならないのです。
そして、最重要の視点は、財政の健全化です。偏向せずに、中長期に亘る計画性を大事にしながら、取りあえずは、短期、5から10年の動向を具体的に検討し、地域住民にも理解出来得る、財政健全化計画を策定し、実行しなければなりません。
それには、それに堪え得る組織と人的ストックの構築が急がれます。
また、その手法と目的達成の為の最低条件は、地域の共感づくりです。共感を積み重ねていきながら、最後に信頼関係を作り上げる事を目的とした、場作りの仕掛けが今、必要とされています。
コミュニケーションの場作りを、どういう風にするか。その目的は、やはり地域住民の安全安心の確保。所謂、危機管理体制と言う事で共感づくりをするのが、分かり易いのではないだろうかと思います。
又、その為に、リーダーの育成も不可欠です。その要件としては、柔軟で、多様な視点を持った人材で、しかも一過性のものでは無く、継続していく力も重要であり、それらがうまくミックスされた時に、真の意味での地域のリーダーとしての出発点に立つ事が出来るわけです。取りあえずその役を皆さん方に最低限、気持ちだけでも担ってもらわなければなりません。
一つの要素として、今は、地域とのしがらみを断つ必要があります。日産自動車を再建したカルロス・ゴーン社長には奇策は無かったと言われています。やるべき事を実行しただけで、しかも、外国人でしがらみを持たず、過去の経営責任も無かった事が良かったと言われています。
公開の場での議論を通じて、間違った過去を払しょくし、元に戻す勇気を行政の英知として活用して欲しいのです。
新市が目指すものは、地味ではありますが
① 住民の安全安心な環境作りを根幹として、
② 魅力ある地域作りを夢として、
③ 健全財政の構築を旨としましょう。
そしてまず、この4年間は、
1年目 引き継ぎと問題点の整理の視点から→継続と融和
2年目 集約と問題点の解決のため――――→資産の見直しと再整備
3年目 一応の成果の公表を期すために――――→検証と実行
4年目 新市としての活動と新市二期目の課題整理
といった大枠に整理されると思います。
こうしたフレームの中で、取りあえずは、南あわじ市と新洲本市を追い越す事は、難しいとしても追いつく状況と環境を創出し、二市に迷惑をかける事のないようにしなければ、なりません。
これらの事が、時代の流れとして、淡路島が一市になる時の淡路市が本当の意味で対等に連携する最小の条件になります。
これは、津名郡という地域に生まれた者の運命として、次の世代に引き継ぐ事の責務でもあります。
最後に、日経新聞の「淡路市市民一人当り負債日本一」の記事を待つまでもなく、厳然たる事実を提示し、皆さんの覚悟に期待したいと思います。
同様な人口規模の各市との一般会計の比較です。
・淡路市 306億 ・西脇市 161億 ・赤穂市 194億
・洲本市 171億 ・小野市 190億 ・篠山市 216億
・南あわじ市 267億 ・加西市 184億 高砂市 286億
(人口9万5千人)
平成18年4月3日
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